2011/02/20

農業国フランス

パリで開催される "Le Salon International de l'Agriculture 2011" /国際農業展のため、フランス各地からトップモデル達が続々と会場入りする様子がTVのニュースで報道されていた。その様子はまるでカンヌ入りする大女優達のよう。毛並みが艶々のヒツジや眩しいほどに白くツンとすましたアヒル、農夫が手塩に掛けて育てた中から華の舞台にこれぞと選んだ美しい家畜達だ。330種類もが集まるらしい。騒がしさにご機嫌ななめの牛が、拗ねて車から降りようとしない場面も。アレヨッ、パンパンッと慣れた手つきで飼主に尻をたたかれモ~っと前に進む。照明に勘違いした鶏はココリコーと鳴き続け、会場内はびっくり興奮気味の家畜たちと、山ほどに積まれた干草を分け、パリの会場内の農場作りに忙しい農夫たちで高揚していた。期間中、フランス大統領をはじめ大臣や政界の大者も訪れる。毎年のことながら報道陣の前で牛に触る様子がギコチなかったりするが、農業を応援とにっこりアピールする。農業国フランスならではの大規模な農業展示会だ。

フランスは農業国である。一般の人も土いじりに目覚め、庭にも菜園が流行る最近は特に、この「農業国」はメリットに響く。ところが実際には農業経営者達は絶望的に苦しんでいて、農業離れが進んでいる。昨晩もTVでルポルタージュがあった。牛を飼う農場のオーナーは資金繰りに尽き、生活費もままならず、病気になった牛に獣医も呼べず、見殺しにするしかなかったらしい。 餌代も払えず15分おきに催促の電話に悩まされている。家業の農業を継いだ女性は、1年中汗水流してやっと収獲したりんごを、価格競争の激しい大手スーパーに買い叩かれ、利益はほとんど出ないと言っていた。損失が出る場合もあるらしく、何トンものりんご、見目は悪いが充分に食べられるりんごを捨てるより仕方がない。彼らの目に悔しさともどかしさの涙が滲んでいた。

ちょうど1年前、南仏の農業経営者が人気のトークショー番組に出演し、今の農業の実態を語り、このままでは次の時代に繋げることが出来ない、何とか政策を打ち出さないと国が危ないと訴えた。真正直な姿と実経験からくる怒り、若い聴衆もコメンテーターも心を打たれ、大拍手が起こったほどだった。だがそれから1年、先週同じムッシューが再び登場したが、その後何の改善政策もなく、結局彼の幾ヘクタールもの梨畑も、全ての木を切り生産を止めるより仕方がなかったと語った。
「どんな思いで木を切っていったか想像できますか?」涙声になり、声は怒りで震えていた。コメンテーターが、会場の若者達を前に農業という職業についてどう思うか尋ねた。
「農業は素晴らしい職業です。私はこの職業に誇りを持っている。」彼ははっきり言い切り、最後に付け加えた。
「希望もすっかり捨てた訳ではない。いつか再会できるように、木の根元を残してある」


最終消費者の一人として、深く考えさせられてしまった。

2 件のコメント:

  1. シャイやぎさん
    只今!ジャスト11時 そちらは、午前3時?夢の中ダアー

    今回も興味深く読ませていただきました!(^^)!
    八頭身のアヒルさん達 また何処か悲しげな眼差しの牛さん...
    将来の事を思い悩んでるのでしょうか???...

    一瞬!顔に雪でも...オモイキヤ拡大してみたら
    顔の中央が白い毛並みになってるですネー

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  2. 珍竹林さん
    こちらグ~スカ寝てる間に早速コメント、
    いつもありがとうございます!!

    八頭身のアヒルさんっていい表現!七頭身にもとどかなそうな私には羨ましい限りですわぁ。牛はカメラを近づけすぎてむっとされてしまったようなワンショットでした。

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