2011/07/17

オーストリアへ ブレーゲンツ

梅雨が明けて本格的な夏到来、気温は既に34度。
「ヨーロッパの夏はこんなに暑くないんでしょう」とよく言われるが、確かに日本と比べ湿気がないから過ごしやすくはあるが、フランスでも猛暑になった年がある。夏中雨が降らずに毎日40℃近く、病院は熱中症の患者で溢れ、死亡した一人暮らしの老齢者が続出した。南仏では山火事が広がり、フランス中大騒ぎだった。お蔭でCanicule/カニキュール、猛暑という単語を繰り返し聞くことになり、自然に覚えることが出来たが、とにかく暑い夏だった。

フランスの一般家庭ではエアコンを使わない。待ちに待った夏だから暑いのを楽しむ。一軒屋ではプールがなくても庭に長いすを出し、水着で日焼けしながらリラックス。食事も外のテーブルで、が多くなる。アパルトマンでもテラスでのビキニ姿をよく見かける。若くないから、スタイルがよくないから、なんて気持ちは存在しないようだ。南仏など暑さの厳しい地方では、午後の日差しの強い時間、日除け扉やシャッターを半分閉める。このように日光を遮っただけで石造りの家の中はひんやり涼しくなったりするのが通常だ。
ところがその年は異常だった。夜も熱帯夜が続いた。扇風機でもあればと買いに行ったが、既にどの家電販売店でも売り切れで、入荷は未定。
「もう我慢できない」その足でスポーツ店に行き、小さなテントを買った。
7月と8月、フランスはバカンスシーズンだ。誰もがそのことしか頭にない。そうだ私達も避暑でバカンスに出かけよう。思い立ったが吉日、車に最低の着替えと歯ブラシ、テント、懐中電灯を積み込み、出発したのだった。勿論車にもエアコンはないが、窓を開け、心地よい風をいっぱいに受けると猛暑なんて何のその、ヨーロッパでの初キャンプに鼻唄が飛び出す。
目指すは東のエデン。スイスのバーゼル、チューリーッヒを抜けてオーストリアへ向かった。

スイス、オーストリアとの国境が近づくと、大きな湖が左手に広がってくる。ライン川流域で最大の面積をもつボーデン湖で、スイス、ドイツ、オーストリアの国境に接している湖だ。
オーストリアに入ってすぐのBregenz/ブレーゲンツはバカンスを過ごすのにぴったりの湖畔の町だ。夏の湖上オペラは有名らしく、その日も間近に迫った公演の大掛かりな設営の真っ最中だった。
湖畔にも大きなキャンプ場があったが、私達は郊外の牧場に隣接したキャンプ場に向かった。

キャンプというと、私は山登りを描くが、ヨーロッパのキャンプはキャンピングカーでが多い。だからキャンプ場での陣地は車込が通常だ。空いている好きなところに車を止めて、その近くにテントを張る。リュックに担いで物を運ぶわけではないので、あらゆる物が運べる。テーブルに椅子、テーブルクロス、クッション、ラジオ、テレビと、リビングをそのままキャンプ場に移したような様子も少なくない。自然に入り込み、日常と違う最小の道具で工夫をこらしたキャンプが好きな私としては、何だか物足りない気もするが、考え方を変えればそれはそれで便利である。
食事も面倒であればレストランに行けばよいし、買物もわざわざ用意していく必要はなく、キャンプ場近くのスーパーで買える。自然に触れるという点では同じである。
第一日目は涼しい牧草の中、心行くまで星空を満喫して、深い眠りについた。

翌朝、朝露で澄んだ空気を思う存分吸い込み、お湯を沸かしてインスタントコーヒーを入れた。いつもと違う朝、それだけでコーヒーの味も格別だ。気分爽快、隣に陣取った車のナンバーが同じエリアナンバーだったことから、自然と世間話が始まる。アルザスのミュルーズ近郊から来た家族だった。暫らくして、父親が言い出した。
「そのテント、何処で買ったの?」郊外どこにでもある大型スポーツ店の名前を言った。
「やっぱり。それね、気をつけたほうがいいよ。ほら、上の境目に穴が開いてるだろう。雨が降るとここから浸み込んで、テントがプールになるんだ。それがさ、見る見るうちに水がたまってって、大変だったことがあるんだから。」
「テントがプール!そりゃ昨日雨が降らなくて良かった。テントで泳ぐってのもねぇ。道理でおもちゃほどの値段だった訳だ。」
冷汗をかきながらだが、朝からみんなで大笑い。柵の向こうの牛達も吃驚しているようだった。こうなると山登りキャンプでなくて助かった。小さな町だけれど、スポーツ店が何処かにあるだろう。早速雨漏りのしないテントを求めて、ブレーゲンツの町散策に出かけることにした。

つづく・・・・

6 件のコメント:

  1. 次の記事がそろそろと...先ず一番にココへ飛んだヨー
    アッ!ヤッパリそうだったァー
    楽しいそう ランラララン♪♪

    次々と出てくる地名!!
    ツアーではなくて、じっくり腰を据えてのトツクニでのご生活
    実にうらやましいナ

    次も楽しみにしてるヨ(*^。^*)

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  2. 国境を越えて自由奔放、気まま暮らし??? 海外の暮らしはこの意気が大事なんだなあ と思わせられる 今回も暑い夏の楽しい思い出ですね。続き待ってますよ~~~

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  3. 珍竹林さん
    早速のフライトありがとうございます!

    何年も前の記憶を辿り、ガイドブックで確認しながら
    書き始めたのですが、ツアーでない分、見所をけっこう
    逃してたりして、ちょっと悔しい気分です。
    当時はカメラも持ってなくて、写真無いのも残念です。

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  4. みいちゃんさん

    あの年の暑さを思い、汗かきかきPCに向かって、記憶を辿ってみました。ガイドブックもない旅だったので(言い訳)、観光スポットについてはおぼろげです。その割に美味しい物の記憶が鮮明なのは我ながら不思議ですが。

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  5. アハハ、結構、結構。美味しいものは目と鼻と舌と胃袋で覚えますもんね。美味しい記憶って幸せの記憶!!私も各地に持ってますね。食いしん坊の夫はツアーで行っても別行動してまでも美味しいものにありつく執念がありました。

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  6. みいちゃんさんへ
    美味しい記憶は幸せの記憶、ほんとに腹から納得です。
    ご主人様と美味しいもの談議してみたかったなぁ。
    強烈なチーズの話など(笑)盛り上がったことでしょう。

    もっともっと美味しいもの食べて、幸せになりたいですね!
    何を食べても美味しいと感じれるのはこれまた幸せなことです。

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